
おフローにしますか、それともエディ?
しのげ!退屈くん
文:安田謙一画:辻井タカヒロ
元タートルズ、フロー&エディのフローことマーク・ヴォルマンが9月5日に78歳で亡くなった。
日頃、つくづく追悼ベタな私ではあるが、無性にフロー&エディのことを書きたくなった。誰にも頼まれていないのに……。
……誰にも頼まれそうにないから。
彼らが参加した数多くの曲から、10曲を選んでカウントダウン形式で紹介しよう。ザ・ベストテン、ということで、フロー柳徹子さんと久米ディ宏さんの司会で。
10位、フランク・ザッパ&マザーズ・オブ・インヴェンション「ハッピー・トゥゲザー」(71年)
所属レーベルとのトラブルで能年玲奈のようにザ・タートルズと名乗れなくなったハワード・ケイランとマーク・ヴォルマンをスカウトしたのはザッパ。水を得た魚のように大暴れする二人。
9位、Tレックス「ゲット・イット・オン」(71年)
あの漫画みたいなハイトーン・コーラスが無ければ、果たしてこの曲や「メタル・グルー」はグラム・ロックとして成立したのだろうか。
8位、ブルース・スプリングスティーン「ハングリー・ハート」(80年)
ラモーンズのジョーイに依頼されてボスが作った曲、というトリヴィアも忘れずに。
7位、ブロンディー「Tバーズ」(80年)
「ハングリー・ハート」同様、スペクター・サウンドを目論む源泉かけ流しのエコー・サウンド。いずれも二人の個性を活かしているとはいいがたい。具体的に「ルージュの伝言」の山下達郎の感じで、と発注されてほしかった。

6位、ホイト・アクストン「テレフォン・ブース」(74年)
俳優兼シンガー&ソングライター。スリー・ドッグ・ナイト「喜びの世界」の作詞も手掛けた人。アーシーなスワンプ・ロックに艶をそえる。
5位、キース・ムーン「キッズ・アー・オールライト」(75年)
オールスター乱痴気アルバム『トゥー・サイズ・オブ・ザ・ムーン』収録。みんな夢の中。
4位、チェックポイント・チャーリー「ショウ・ミー・ザ・ウェイ・トゥ・マイ・オウム」(82年)
ライノから出た4曲入りEPで、なんとジャーマン産ニュー・ウェーヴ/シンセ・ポップをパスティーシュ。この盤、めちゃ欲しいです。
3位、タートルズ「ユー・ショウド・ミー」(68年)
イレミディ、と仏語発音を教えてくれたデ・ラ・ソウル「トランスミッティング・ライヴ・フロム・マース」のサンプル・ネタ。原曲の気怠さを120%活かしたプリンス・ポールは象印賞。
2位、デヴィッド・キャシディー「ダーリン」(75年)
フロー&エディの動画をいろいろ漁っていて発見した(*注)。ビーチ・ボーイズのカヴァー。眩暈がするほどイケてない&嫉妬するほど幸せそう。他人とは思えない。

1位、フロー&エディ「キープ・イット・ワーム」(76年)
アルバム『ムーヴィン・ターゲット』収録。映画「悪魔と夜ふかし」のラストの曲。「グッド・ヴァイブレーション」、「愛こそはすべて」も引用。10㏄「芸術こそ我が命」と同じ主題を扱うパロディ・ロック。いずれ「1976年産」というのが私には最重要。タイトルを意訳すると「しのげ!」となります。
