誠光社

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足りない「もの」を作る

木の板

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足りない「もの」を作る

昨年末、手元にあった丸太を製材所で挽いてもらい、手頃な板にした。

器などを作るための木材が必要になったからだ。

槐(エンジュ)の丸太。槐の木は割れにくいので数年丸太のまま転がしてあった。

板にしておけば乾きやすく、割れにくい。さらには運びやすく積みやすいので場所も取らない。

わざわざ年末に行かなくとも、前もって挽いておけばよかったのだが、大体の用途が決まるまでは、ちょうどよいサイズ(厚みや長さ)が割り出せない。

特に今回持って行った木材は割れのない大きなものだったので、出来れば小分けにせず大きな材料として使おうと考えていたので、なかなか挽いてもらう決心がつかなかった。

いくつか製材したものの中には築100年以上の古民家の梁として使われていた欅や、長年近所の街路樹だったが大きくなりすぎて伐採された槐(エンジュ)の木など、変わった来歴のものもあったので、そういったものの個性を活かせる使い方を模索していたということもある。

譲ってくれた友人は、「ここまで上等な梁は滅多に見ない」と言いつつも置き場の確保に苦労していたし、街路樹を切っていた造園屋さんも「太くて綺麗な丸太がこんなに揃っていたら何にでも使える」といいつつも差し当たって使い道が思い当たらないらしく、お金を払って廃材として処理していた。

どちらも、求めている人からすれば相当な価値のあるものだが、多くの人にとってはやり場に困る、無用の長物だろう。

割れもなく太い欅の梁。元々は7m程あったが運ぶのが大変。欲しい人には宝物。

普段はホームセンターで規格サイズの木材を購入することも多いし、銘木店などで商品然として並べられている板から材料ありきでものを作ることもあるが、完成図から逆算して希望に合致するものがいつもタイミング良く見つかるわけではない。特に木は乾燥と製材に年月がかかるので、実制作に入るまでの期間が長い素材のように思う。(どこからが実制作かということもあるが)

何はともあれ、使うと決めたからには適材適所で無駄のない木取りをしなければならないので、あれこれ制作予定のものを書き出し、メモをもって製材所へ向かった。

製材所によって得意分野が違う。建材の古材は釘が入っていたりするとやっかいなので断られるところもある。用途に適した部分で薄板や角材などを切り分ける。

何百キロもある木を大雪の日に持っていくことになってしまったので運び込むのに一苦労あったが、結局のところは大きなものから余裕を持って切り分けることが出来たので、工具用の材料や机の天板用の板、彫刻作品用の材料まで、欲しかった材がいっぺんに手に入った。

さすが製材屋さん、余すことなく綺麗にカットしてくれた。

当たり前といえば当たり前なのだが、大きな木は大きく使うだけでなく、小さな材料を作るにもやはり良いと実感したのだった。

最後に残った樹皮の屑などの部分を燃やして職人さんが暖を取っているのを見ながら、不要なものが出なかったように感じ、気分が良かった。