誠光社

京都 河原町丸太町 書店

編集室

足りない「もの」を作る

どんげ(藁の腰掛)

1

足りない「もの」を作る

以前、「どんげ」や「とん」と呼ばれる、藁で作られた腰掛のような民具を調査・制作する機会があった。イサム・ノグチや河井寛次郎などの文化人も手元に置いて使っていた趣のある民具なのだが、生活様式の変化もあり現代では暮らしの場で見かけることは少ない。

円筒形の藁の塊、といった見た目で、土間などで腰掛として用いられることが多かったようだ。

どうも100年程昔にはまだあちこちに同じようなものがあったようで、今も関西を中心に各地の博物館や資料館には半世紀以上前に作られたものが残っている。

相当古い時代から作られていたようで、宮中行事で使用されていた記録もあり京都が発祥とも聞くが、一方で中国や台湾などにも同様のものがあることから元々は大陸からの伝来だろうとの説もあり、事実は定かではない。

作られていた地域や時代によって呼び名も、どんげ、とん、藁彲(わらとん)、円座、エンダ、と様々なものがあり、比較的薄い作りのものや別構造のものと混同されることもある。

河井寛次郎記念館の「どんげ」

素材全てが稲藁で出来ている為、民家の納屋の片隅で朽ちかけた状態のものを見かけることも多いが、農村文化の残る地方では現在も製作を続けている年配の方がおり、当時の道具としての使われ方や制作風景をうかがい知ることが出来る。

当時はかまど周りでの仕事や、土間での作業に用いられることが主で、丁寧に作られたものは来客用の椅子としても重宝されていたようだ。

板間や畳の上で使われることもあったらしいが、サイズ的に座ってゆっくりくつろぐような用途というよりは、中腰での作業や一時的な休憩の際に腰を下ろすような使われ方をしていたと思われる。

農家が身近にある藁を材料に農閑期に作っていた

取手の有無や補強の仕方など地域や作り手によって意匠的な違いこそあるが基本的なつくりは共通しており、並べた藁束を順に編み込んで5m程の帯を作り、それをロール状に丸めて別の縄で縛ったような形である。高さ・直径とも30cm程のものが多い。 

昔のものを解いて構造や制作工程等を調べ、新たに数種類作ったが、材料の調達や下準備、制作での力仕事など、一つ作るだけでもとても手間暇のかかるものだった。

前もって制作に向く稲藁を刈り取り干す作業や選別等をしておき、そこから藁打ち、太さの違う縄を綯う作業、手足を使っての編み込み、座りやすい形に整えていく作業と進めていく。腰を曲げたまま淡々と動き続けるような工程も多く、今では作り手が少ないこともうなずける。

とはいえ、出来上がったものは使い心地も良く、地面との近さ(現代の一般的なスツール等より低いものが多い)や、藁の塊といった存在感も独特なものだった。

「壊れないように頑丈に」ということよりも使ううちに座面がへこんで「馴染んでいく」ことを優先するようなつくりになっている。

頻繁に使えばじきに擦り切れて傷んでしまうものだが、生活の中で求められていた形だからこそ身近にある素材で何百年もの間変わらずに作り続けられてきたのだろう。