
LEE KAN KYOインタビュー
ギャラリートーク 作家さんに訊いてみた
最後のCD
2025.7.1 ー 7.15
開催記念インタビュー

ー今回の展示のコンセプトを教えてください。
LEE:前回レンタルDVDをテーマに展示をさせてもらったんですけど、それを続けている中で「次回は何をテーマにするんですか?」と聞かれることが多くて。何にしようと考えた時、思い浮かんだのがCDだったんです。
ー前回の展示の際にお話を伺った際には、台北に住まれていた中高生の頃に海賊版のDVDをよく借りていたっていう話をされていたんですけど、CDの方はどうですか?

LEE:DVDよりもCDの方がより夢中でしたね。タワーレコードもあったし、個人のショップもありました。そういうところに通ってたくさん試聴しましたね。
大きなきっかけとして、X JAPANのHIDEさんが亡くなったことが台湾でも大きなニュースになったんです。X JAPAN自体はそんなに有名なわけではなかったんですけど、日本の有名人が急死したということが話題になって、それではじめてX JAPANのことを知って、CDショップで探してみたら、8センチシングルがあったんです。日本から輸入されたもので、倍くらいの値段がついていて変えなかったんですけど、変なCDがあるなと妙に印象に残った。
ーそこから色々と聴きはじめたわけですね。
LEE:そうですね。その先輩のラウドネスとか、布袋寅泰とか。そういうショップの隣にここで展示しているようなJ-POPも並んでたんです。それと同時に、台湾でも「浅ヤン」(「浅草橋ヤング洋品店」日本ではテレビ東京系列にて1992年~96年まで放映)が放送されていて、そこでこの辺り(モー娘。ハロプロ関連)にも触れていました。
ーその当時台湾のポップスは聴いてたんですか?
LEE:あんまりですね。C-POP(CHINESE POP)といって、あるにはあったんですけど、中高生の頃だったんで、周りの流行に反発したかったんでしょうね。外国の音楽のほうがかっこいいということでJ-POPと欧米のポップスを並列に聴いてたんです。BON JOVIと同じ感じでGLAYとか聴いてました。正規のものはなかなか買えなかったんで、海賊版とかから触れました。広末のシングルが5枚くらい一緒になってるCDとか。

ー日本に来てようやく短冊CDを買い始めた?
LEE:日本に来た2010年辺りにはすでに終わってましたね。一番CDカルチャーがどん底だった時。でも、こういうものが安く買えたのでそれはタイミングが良かったと思います。ブックオフとかメルカリでここに描いているようなものはほとんど揃えました。音楽というよりCDが好き、というのは言い過ぎかもしれませんが、私の制作物全てに通じるのは、特定のカルチャーとか趣味には興味がなくて、選んで描くとかはないんですよ。
ー制作の手順について教えてください
LEE:まずは実際の短冊CDを買って、ばらばらに分解して、キャンバスや紙で再構成するんです。アクリル絵具や色鉛筆などを使ってジャケットを模写して、素の歌詞や広告部分を切り取って中面に埋め込んでいます。だからジャケットの中にはちゃんとCDが入ってます。あとはひたすら模写ですね。
ー前も聴いたと思うけど、あえて黒目を描かないのはどうしてですか?
LEE:最新版の答えを言うと、「残像」なんじゃないかな。わたしの描いているのは全部スターばかりじゃないですか。スターが輝いた残像を描いてるんです。
ー今回展示してもらった作品で、あえて思い出の一枚というとどれになりますか?
LEE:難しいですけど、SMAPの「ダイナマイト」ですかね。中学生の頃、旅行で初めて日本に来た時、飛行機の中で聴いたんです。その時のことをはっきり覚えている。
ーSMAPになにか一言あります?
LEE:ありがとう。ですかね(笑)
それは短冊CD全般にも言えることで、最近はレコードとかカセットテープとか、また流行ってるじゃないですか?でも僕はそっちの方には興味が向かないんです。キラキラしたものが好きで、この国には未来があると思って日本に来ました。だから8センチCDは小さいし、光ってるし、なんか未来的なんですよね。