帝冠様式の時代と音楽 ~1933年のエコーを「あらたな戦前」の今、聴き直す
2023.11.12 19時〜20時30分
https://kyotocity-kyocera.museum/news/cat_press/2023/09/21
90周年ということで、演奏曲の選定のひとつの視点として、美術館が出来た1933年頃の音楽から選んでみるというコンセプトを考えたところ、どの候補曲も興味深い背景があり、演奏だけでなくトークや原曲を聴く機会もあれば面白いのでは、というアイデアが浮かびました。
美術館の建築としての特徴「帝冠様式」からも明らかなように、1930年代は、日本の文化において、それまでの「脱亜入欧」だけなく、いかに日本的な近代化がありえるか、という模索が、公式・非公式のさまざななレベルで実践された時代だと言えるでしょう。
帝冠様式というといかにも厳めしいですが、流行歌のようなポピュラー文化においても、戦後の歌謡曲、演歌の元型となるような、庶民的かつモダンな形式が追求された時代であり、また僕の音楽的バックボーンのひとつであるチンドン音楽も、その前夜に登場したことを思うと、和洋折衷のひとまずの完成が目指された時代なのではないかというイメージが浮かびます。
また、30年代の日本文化を、その後の戦争と敗戦という巨大な体験のプロローグとしてとらえるなら、あらたな戦前ともいわれる現在、その時代性からは懐旧にとどまらない視点を得られるのではないでしょうか。
京都には、旧知の音楽学者で「近代日本の音楽百年」という記念碑的大著を世に問われた細川周平さんがおられ、このような視点で、しかもざっくばらんに音楽を語ることのできる最適人者です。
また、細川さんの若きご同僚で、「1933年を聴く」という、まさに今回にうってつけの著書のある気鋭の音楽学者・齋藤桂さんもご紹介いただき、二人の豪華なゲストをお迎えして、とても面白そうな会ができる運びとなりました。
「京都市美術館90周年記念祭」のスピンアウト企画として思いついたこの会ですが、ジンタらムータのライブのアフタートークとしてもざっくばらんで楽しい会になれば嬉しいです。どうぞご来場くださいませ。
(大熊ワタル)
-
細川周平
1955年大阪生まれ。京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター所長。『遠きにありてつくるもの―日系ブラジル人の思い・ことば・芸能」(みすず書房)で2009年読売文学賞。『近代日本の音楽百年―黒船から終戦まで』(岩波書店、全四巻)で2021年芸術選奨文部科学大臣賞。幕末から今日にいたる大衆音楽に広い関心を持つ。大熊ワタル氏とは1990年ごろ、篠田昌已と長谷川宣伝社のCD『東京チンドン』以来のおつきあい。
-
大熊ワタル(クラリネット他)
80年代、東京のポストパンク黎明期に活動開始、前衛ロックバンドでシンセサイザー等を担当。
20代半ばでチンドン屋に入門し街頭でクラリネット修行。
90年代、クラリネット奏者として自己のグループ・シカラムータを始動。その祝祭的で超ジャンル的な音楽性は国内外で話題となる。
現代的な表現と並行して、日本独自の街頭音楽チンドンを軸に、バルカン、クレズマー(東欧ユダヤ系民衆音楽)など世界の広場的音楽に取り組み続け、近年はチンドンユニット・ジンタらムータなどで海外公演多数。
コンサートのみならず演劇、映画、サーカスや著作など領域を超えて出没中。
-
齋藤桂
1980年大阪府生まれ。博士(文学・大阪大学)。専門は日本音楽史、ヘヴィー・メタル。日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)、同二国間交流事業特定国派遣研究員(シベリウス音楽院)、大阪大学大学院文学研究科助教を経て、2018年度から京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター専任講師。著書に『〈裏〉日本音楽史――異形の近代』(春秋社、2015年)、『1933年を聴く――戦前日本の音風景』(NTT出版、2018年)、論文に’Heavy Metal Scene in Osaka: Localness Now and Then’, Bardine, Bryan A., and Jerome Stueart, eds. Living Metal: Metal Scenes around the World, Intellect, 2022など。
- 開催日
- 2023年11月12日(日)
- 時間
- 19時〜20時30分
- 会場
- 誠光社
- ご参加費
- 1500円+1ドリンクオーダー
- 定員
- 25名さま