誠光社

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サンドマンが来る

サンドマンが来る

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いいなアメリカ ジョンとポールが歌うランディ・ニューマン

目を閉じてリルガール
泣いちゃ嫌われる
ついてない子ね ついてない子ね

汚いでっかい世界
「そりゃ無い」って手合い 嘘つきだい
サンドマンカミンスーン
ほらもうカミンスーン

閉じて目を
小さなドリームをユー&ミー
あなた自身の場所へ
まだ分からない

目を閉じてリルガール
眠れマイリトルベイビー
サンドマンカミンスーン
ほらもうカミンスーン

サンドマンカミンスーン
ほらもうカミンスーン

──自動翻訳の裏をとる──

 少年時代、家の裏の公園では、近所の同年代の子供達が毎日遊んでいた。公園に面したある民家の玄関先は高くなっており、公園の中の様子がよく見える。そこに立って、毎日私たちを見ている女性がいた。女性は腕に赤ん坊を抱いているのだが、よく見ると赤ん坊は人形であった。女性の赤ん坊は死んだのだ、と上級生は私に教えてくれた。

『サンドマンが来る』が収録された『ザ・ランディ・ニューマン・ソング・ブック』4LPボックス。CDではVol.2に収録されている。

『サンドマンが来る』私はこの美しい曲を、ニューマンのピアノと歌のみによるセルフカバー集『ザ・ランディ・ニューマン・ソング・ブック』の中に見つけた。オリジナルは知らなかった。英語詞を検索しそのまま自動翻訳をかけてみると、歌詞の一部と思われた終わりの部分が、曲の解説になっていた。

「この曲は、1990年のミュージカル警察TVドラマ『Cop Rock』のため、最初に作られましたが、ニューマンは1995年、自らのミュージカル『ファウスト』で再利用しました。『Cop Rock』では、コカイン中毒の母親が赤ちゃんに歌ったもので、次のトリップのためだけに大切な赤ちゃんを売ってしまうシーンで歌われます。一方『ファウスト』では、狂ったマーガレットが、殺してしまった自分の赤ちゃんの代わりに、棒に向って歌います。ニューマンの『ファウスト』は、ゲーテの版とミルトンの『失楽園』の要素を借用しながら、ファウスト伝説に基づいて、ユーモラスな皮肉を込めて完成したミュージカルです。」(自動翻訳を少し直しています)

 なるほど。この歌は劇中歌であり、本来女性が歌うべき、しかも曰く付きの子守唄であった。短い解説は気になることだらけであるが、その前に「サンドマン」とは何者であろうか。調べると「睡魔」のことであった。 ドイツでは古くから夜更かしをする子供に「サンドマンが来るぞ」と脅して寝かしつける習慣があったという。ニューマンの最初の妻、ロスウィタはドイツ人であり、影響があったのではなかろうか。

ドイツなどヨーロッパ諸国の民間伝承に登場する「砂男」は時計の中から現れる、本来姿の見えない妖精だが、大きな袋を背負った老人とされ、 袋の中には眠気を誘う魔法の砂が詰まっている。 目にこの砂を投げ込まれると、誰もが眠らずにはいられなくなるという。

 さて、TVドラマ『Cop Rock』を検索すると、まさしくドラマの母親が子供を売るシーンを見ることが出来た。このシーンこそ、多くのバージョンを持つ『サンドマンが来る』のオリジナルということになる。踏まえると、歌詞のさまざまな部分が腑に落ちてくる。例えば、「小さなドリームをユー&ミー」であるが、私は最初「小さなドリームをあなたに」と訳した。「ミー」を省略した方が母親の優しさをより自然に表せると思ったからである。だがよくよく考えると「ユー」の「小さなドリーム」は赤ちゃんの見る無邪気な夢でよかろう、がしかし「ミー」の「小さなドリーム」とはコカインによるトリップのことではなかろうか。子供を売って味わう罪深い夢、母親の優しい顔と恐ろしい顔が同時に現れる、省略の許されない一行であった。

TVドラマ『Cop Rock』より。コカイン中毒の母親役、キャスリーン・ウィルホイト。ドラマの内容は定かではないが、このシーンだけでも、なかなかどうして見応えがある。

 そして、私がこの短い解説中、最も気になっている箇所であり、裏を取りたい、事実を確認したいと熱望するのは「棒に向って歌います」である。ミュージカルにおいて、ファウスト博士の恋人マーガレット役は、往年の大歌手リンダ・ロンシュタット。「棒」は自動翻訳をかける前「stick:スティック」であったが「stick」には様々な意味が含まれる。彼女が本当に棒に向かってこの歌を歌ったのか。ぜひともこの目で確認したかったが、ミュージカル『ファウスト』当時の映像はおろか、画像すら何一つ見つける事が出来なかった。

丸太からのメッセージをツイン・ピークス保安官事務所に伝える、丸太おばさん(Log Lady)ことマーガレット・ランターマンを演じたキャサリン・コウルソン。2017年の『ツイン・ピークス』新シーズンでは、鼻にチューブを付け、座ってのみの出演であったが、放送前の2015年には亡くなっていた。デビュー前からリンチ監督を支え続けた仲間であった。

 あと、棒を抱くマーガレットときいて、私が真っ先に思い浮かべるのは、デヴィッド・リンチ監督の大ヒットTVドラマ『ツイン・ピークス』に出てくる、通称「丸太おばさん」をおいて他はありえない。いつも丸太を抱えた、謎多き彼女の名前も「マーガレット」。偶然の一言で片付けてよいものか。謎は深まる一方であるが、現在のところ報告は以上である、ダイアン。