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最高に孤独

最高に孤独

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いいなアメリカ ジョンとポールが歌うランディ・ニューマン

──「フランク・シナトラの為に書いた曲なのだが、彼は演りたがらなかった」ランディ・ニューマン──

何処だってアラウンダワールド
よりどりさエニィガール
羨ましいって?
そりゃない
誰だって知ってるマイネーム
もう嫌だこんなクレイジーゲーム
おぉ 寂しったらないんだなぁ

聞いてほら バンドがプレイ 僕に
聞いてほら 皆んながペイ 僕に
凄い喝采 凄いパレード
凄いマネー 膨らんで
おぉ 寂しったらないんだなぁ

聞いてほら 阿呆の群れ
さぁもっとやれ 知ったこっちゃねぇ
おぉ 寂しったらないんだなぁ
おぉ 寂しったらないんだなぁ
フランク・シナトラ
フランク・シナトラ(1915年12月12日 – 1998年5月14日)又の名を「ザ・ヴォイス」。ショービジネスの世界にとどまらず、マフィアから大統領まで飛び出す、そのにわかに信じがたいエピソードの数々は、あらゆる意味で規格外のスターであったと言わざるを得ない。

「世界で知らない人がいないぐらい有名になりたい」

先日、日本過去最年少13歳でオリンピック金メダルに輝いた、スケボー女子選手の無邪気な発言であるが、物心と共に我々の心に飛来するや否や、なかなかどうして手放し難く、我々を惑わせ、引きずり回さずにおかないこの欲求。「有名になりたい」とは一体何なのか。

「虚栄心」は虚の文字で始まるが、世界中の同様の言葉が、やはり同じように表現されているという。ではなぜ、誰もが虚しいと知りながらも、懲りもせず追い求めてしまうのか。

岸田秀著『ものぐさ精神分析』
岸田秀著『ものぐさ精神分析』。伊丹十三はこの本を読み、目の前の世界が崩れ落ち、世界が一新したという。

 岸田秀の著作『ものぐさ精神分析』に私の好きな比喩がある。人間は一枚のポスターのようなもので、人間同士、一人一人の繋がりが、一個一個の画鋲となり、社会という壁に貼り付けられているという。そして、人からどんどん見放され、最後の画鋲が外れた時、ポスターは壁から剥がれ落ち、人間は発狂するらしい(奇声をあげながらひとり野山に分け入っていくような感じであろうか)。

「有名になる」とは社会から剥がれ落ちる不安から、画鋲まみれになったポスターのようなものなのか。今の我々にとってSNSなどの「いいね」や「フォロワー」は針の短い画鋲に違いあるまい。そして、実はそれらを虚しいと知りながら、何かに追われるように追い求めてしまっている我々がいる。

「とても健全とはいえない」とは、すでに誰もが感じているところであろうが、悲しいかな、この画鋲にまみれたポスターこそ、病める私たち人間の追い求める姿なのである。

エルヴィス・プレスリー
エルヴィス・プレスリー (1935年1月8日 – 1977年8月16日)は晩年、ストレスからくる過食症による体重の激増に加え、主治医から処方された睡眠薬などの誤った使い方から、心身ともにバランスを崩していった。死因は処方薬の極端な誤用と公式発表された。42歳没。

 余りにも多くの人間に愛されることは、余りにも大きな孤独の原因となる。

「ただでさえ世間に疎いのに、有名人になったって意味ないだろう?こんな馬鹿げた状況から私は一生逃げられないらしい」ランディ・ニューマンの言葉であるが、今やこの歌の作者であるニューマン自身も、歌の中の男と同じ境遇に立たされてしまったようである。

マイケル・ジャクソン
マイケル・ジャクソン(1958年8月29日 – 2009年6月25日)は名実ともにポピュラー音楽界の頂点に立つ一方、私生活や容姿に関するゴシップや数々のスキャンダルによる心労から、鎮痛剤や睡眠薬への依存に苦しんだ。自宅にて主治医による麻酔薬の過剰投与により死去。50歳没。

 歌の英タイトル『Lonely At The Top』を直訳するならば「頂上における孤独」。マイケル・ジャクソン、エルヴィス・プレスリー、ハンク・ウィリアムズら、真の意味で頂点を極めたスターたちの悲しい最期は、驚くほどみなよく似ている。

 いつの時代もトップスターの孤独は、やはりトップクラスなのであった。「おぉ 寂しったらないんだなぁ」