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ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男

ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男

京都シネマで『ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』を観た。思えばアルトマン作品との出会いは、京都シネマの前身である京都朝日シネマで『ショート・カッツ』を観たのがはじめだった。おそらく1993年前後、まだ高校生だった頃のことだ。レイモンド・カーヴァー作品の映画化と聞いて、監督のことなど何も知らずに鑑賞し、その大胆な脚色に驚かされた。感化され、『M.A.S.H』、『ロング・グッドバイ』をレンタルビデオで、『プレイヤー』、『ナッシュヴィル』をDVDで観た後、ポール・トーマス・アンダーソンの登場、とくに『マグノリア』を観てすべてがつながった気がした。今回のドキュメンタリーでも終盤にポール・トーマス・アンダーソンが登場し、アルトマンについてコメントしている。

そのキャリアを年代順に追っていくシンプルな構成のドキュメンタリーを鑑賞し、アルトマンの仕事と人生を俯瞰して浮かぶキーワードはふたつ、「反骨」と「家族」だ。

俳優に同時にセリフを喋らせたことで監督をおろされたエピソードは、勝新太郎が『警視K』において、リアリティを追求するためにセリフの同時録音を敢行し、セリフがほとんど聞き取れないというエピソードを連想する。初期のテレビ作品『コンバット』では戦争PTSDを扱い、メディアや制作サイドから批判を浴びる。さんざんハリウッドに嫌がられたお返しともいえる『プレイヤー』はアルトマンファンにとっては溜飲が下がる痛快な作品だ。

群像劇を得意としたアルトマンはカメラの裏側でも、俳優たちを家族のごとく扱った。エリオット・グールドやシェリー・デュヴァルはほぼ無名の頃に起用した初期作品から継続して登場させ、撮影で訪れる先々に実際の家族を収めたホーム・ムーヴィーを撮影している。

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日本でのドキュメンタリー映画公開に合わせて、アルトマンのビジュアルブックが入荷した。”WES ANDERSON”のビジュアル本同様、名門ABRAMSからの出版。序文をマーティン・スコセッシが担当し、カート・ヴォネガットによる『ナッシュヴィル』評や、ポーリン・ケイルによる評論も掲載されている。もちろん「ファミリー」のポートレイトも満載、貴重なオフショットも惜しげなく披露。『M.A.S.H』の劇中歌として大ヒットし、数え切れないカバー・ヴァージョンを生み出した名曲「マッシュのテーマ」の作詞はアルトマンの幼い息子であり、その楽譜も掲載されている。

思えばマニック・ストリート・プリチャーズというパンクバンド(デビュー当時はパンキッシュだった)が「マッシュのテーマ」をカバーしたのが1992年。CDシングルを夢中になって聴いていたころ、原曲のこと、ましてやアルトマンのことなど知らずに『ショート・カッツ』に出会った。ばらばらに出会ったものが、あるきっかけで一気にリンクする。それが地震であれ、カエルの雨であれ、実にアルトマン的な体験である。

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