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ヴィヴィアン・マイヤーを探して

ヴィヴィアン・マイヤーを探して

写真表現の分野において、ファウンド・フォトと呼ばれる手法が一般的になりつつある。はじめてその手法を知ったのは、オランダの広告会社ケッセルスクライマーが2001年から刊行し始めた”IN ALMOST EVERY PICTURE”というシリーズ写真集。どこにでもいそうな平凡な夫婦の色あせた海外旅行写真を、大雑把なデザインで一冊にまとめただけのものが新鮮だったのは、写真に作為や技術がまったく読み取れなかったからだ。蚤の市やガラクタの山から見つけてきたものを作品として提示する、その見立てによってカメラを使わずとも写真表現が成立する。

謎の女性フォトグラファーを追ったドキュメンタリー『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』を観る前は、ファウンド・フォトの一種を扱った作品だと思い込んでいたが、その思い込みは驚きとともに裏切られることになった。 シカゴ在住のジョン・マルーフが自らの研究のためオークションで大量のネガフィルムを落札したことからヴィヴィアン・マイヤーの物語は始まる。

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素人目にも趣のあるその写真を放置しておくことができなかったマルーフは、スキャンし、ウェブ上にそれらの作品を日々アップし始める。それが話題を呼び、彼は撮影者の調査に乗り出す。2009年に”vivian maier”の検索ワードで唯一ヒットしたのは、彼女の死亡記事。それはつい数日前のものだった。 そこからのヴィヴィアン・マイヤー探しは一気に確信へと迫る。なぜならヴィヴィアンはフィルムだけではなくレシートやメモ、音声テープなどあらゆるものを保管した記録魔だったからだ。徐々に輪郭を表す彼女のパーソナリティは映画館で確認していただきたい。

そのリサーチの途上で彼女の作品は評価を高め、写真集の刊行、世界各地の展覧会巡回など、現代写真史を塗り替えるほどの発見として受け入れられた。過去にもラルティーグのようなそもそも無名の写真家が、世界的な評価を得たことはあるが、いずれもそれは高名なキュレーターや批評家、美術館のお墨付きがあったからこそのこと。しかし、ヴィヴィアン・マイヤーのパターンはそれとは一線を画す。写真に関して素人同然だった青年により発掘され、ウェブ上の反響によって評価が高まり、写真集は空前の売り上げとなったのだ。ファウンド・フォトなどでは決してなく、彼女の写真自体の力が世界を動かしたのである。

ウェブメディアの力、そして現代写真のリテラシーを持った一般人たちの評価が写真史を変える。とても現代的な革命の瞬間を是非スクリーンで目撃してほしい。彼女の作品を最初にパッケージした、POWER HOUSE社からの写真集 “Vivian Maier Street Photographer”が入荷した。映画を観ればかならず彼女の写真集が欲しくなるはずだ。

  • Vivian Maier Street Photographer
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