誠光社 SEIKOSHA

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Hoxton Mini Pressのローカリズム

Hoxton Mini Pressのローカリズム

Hoxton Mini Pressは、イーストロンドンのハックニーというエリアで活動するインディペンデント出版社。Martin Usborne と Ann Waldvogelの二人を中心に、2013年に活動をスタートしたばかり。ハックニーは暴動が頻発する比較的治安の悪いエリアだったが、家賃の安さからここ数年若いアーティストが集まり、小さなカフェなどが次々とオープンする注目のエリアになりつつあるという。このあたりの変遷はNYのブルックリンなんかによく似ている。つい先ごろ刊行された某誌のロンドン特集でも巻頭でHoxton近辺のイーストロンドンエリアが採り上げられている。


同社が刊行する写真集やイラストブックは、すべてフォーマットが統一されている。日本でいう四六判をひと回り大きくしたような、ビジュアルブックにしては小ぶりなサイズのハードカバー。必ず背表紙の部分がクロス装になっており、カバーに箔押しで”Hoxton Mini Press”と刻印されている。つまり、サイズやボリュームが小ぶりゆえ、写真集にしてはカジュアルに購入できるが、ブックデザインは非常に手が込んでいる。アートブックの嗜好性をきちんと理解した上で、普段写真集を買わない人間にもアピールすべく、敷居を下げる努力がなされているのだ。 造本だけでなく、内容もコンセプチュアルである。各タイトルの写真家やイラストレーターは異なりながらも、必ずハックニー周辺のエリア、つまり出版社の地元をテーマにしているのである。写真集の第一弾として刊行された”I’ve Lived in East London for 86 ½ Years”は、生まれてこのかたロンドンを一度しか出たことのない、ちょっと変わった86歳の老人の日常を追ったもので、イーストロンドンのグラフィティだらけの路上など現代的な風景と、老人の独白とのコントラストがユーモラスだ。

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イラストブックの第一弾は、18世紀イギリスの風刺画家、ホガースを連想させるタッチでイーストロンドンで見かけるティピカルな住人たちを滑稽に描いたもので、イラストレーターのアダム・ダントも同様にイーストロンドン在住だ。写真集第二弾となる”EAST LONDON SWIMMERS”はタイトル通り、ハックニーエリアのプールに通う無名の人々のポートレイトに、彼らのパーソナルなストーリーを添えたもの。プールサイドに雪が積もるような時期になぜ彼らは泳ぐのか。

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ある人は、タイで津波に遭遇し、家族を守るため必死で泳いだ体験から水泳に目覚めたといい、65歳のジャズミュージシャンは30歳の頃、庭のプールで溺れかけたことをきっかけにプール通いを始めたという。なにげない会話から名もない人々の印象的な物語が露わになる。本書の著者であるオーストラリア出身の写真家、マデレーン・ウォラーももちろんイーストロンドン在住。

地方の出版社が地域史やエリア情報を刊行するのはよくあることだが、Hoxton Mini Pressの出版物は、ジャンルやテーマを限定せず、地元のアーティストと、自分たちの街の面白さを紹介し、地域の刻印を押した上で、幅広い読者の手に渡るような編集、造本がなされている。規模といいスタイルといい、その活動スタイルは今後注目すべき出版社であることは間違いない。

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